ふと眠りが浅くなって目を覚ませば障子が淡く光っていた。柔らかな青白い光を感じ、今宵は確か満月だったと思い出す。目が覚めてしまった以上布団に入っていても仕方がない。折角だから眠くなるまで月見でもしていようと、布団から静かに這い出ると障子を静かに引く。障子の隙間から一筋の光が入ってきて、障子戸から顔を覗かせてみれば、やはり。吸い込まれそうな濃紺の海に煌々と光る望月が一つ。雲一つなく遠く彼方まで広がる海。砂を散りばめたような無数の星。美しい夜だ。寝ているのが勿体無いと思うほどの澄みきった夜空だった。
白銀に煌めくその光をうっとりと見つめていれば、背後からそっと目隠しがされる。大きな手のひらが瞼を覆ったことによって驚いたが、それが見知った人物の仕業だと気づく。
「……三日月」
「あまりそう見るものではない」
「あんなに煌々として美しいのに」
「月は魅せるからな」
そっと目を覆う大きな手に触れれば、ぐいっと引き込まれて彼の腕の中に。居住まいを正そうと身を捩れば、胸板に頭をピタリと突き付けられる。三日月と諫めるが、頑なな彼の態度に思わず
はくすりと笑ってしまう。
「主」
「――私はかぐや姫ではないのよ」
「連れていかれたら困るからな」
「ふふっ、何それ」
「見るならば俺を見よ、主」
「三日月?どうした……」
「俺が連れていってやる」
の頬を掴み、瞳を覗き込むように見つめる三日月の瞳の中に
は月を見た。蒼い瞳の中の三日月は空に浮かぶ満月に劣らぬ美しさで、
は思わず息を飲んでしまう。吸い込まれそうな美しい瞳の中の三日月を凝視していれば、トンと身体が押されて倒れていく。美しい月はにんまりと笑みを浮かべて、
の上に体重を掛けて頬を愛撫する。
「みか……づき?」
「天に帰るための羽衣は脱がして仕舞っておかねばいかんよな、」