========================================================* 現代パロ。おねしょた。* デフォルト:橋本凛======================================================== にこにこと愛想の良いと笑みを浮かべる彼が得体の知れぬ化物のように思えてならなかった。行儀がよく、愛想よく笑みを浮かべる彼は不気味な異質さを持っていた。我が侭も言わなければ、生意気も言わない、粗相もしない。"都合の良すぎる子供"。気味が悪くないわけがない。大人からしてみれば文句なしの¨良い子¨――¨都合の良い子¨ではあるが、子どもとしては及第点すら届かないだ。子どもらしさのない子どもだった。子どもとは我が侭の一つや二つ、無知故の過ちに無謀に無防備に突っ込んで行って学び成長するものだと思う。自分も決して可愛い子どもではなかったが、まだ生意気であったし、無知故の無茶苦茶をしたものだ。だが彼はいい子過ぎる。可愛げがあるようで全くない。 彼、瀬田宗次郎と橋本凛は今の今まで面識などまるでなかった。遠縁に当たるらしいのだが、一度たりとも顔を合わせたことはなかった。寧ろ遠縁の存在など全く関知していなかった。ある日突然瀬田の保護者から橋本が瀬田と遠縁にあたると電話が掛かってくるまでその事実を知らなかったぐらいである。それを知った時の橋本は驚きもしたが疑問の方が多く、突然の知らせを不審に思う他なかった。 結果から先に言うと、その電話が掛かってきた時に瀬田を引き取るようにと体よく押し付けられたのである。話があるからと呼び出されて電車を乗り継いで呼び出された家に行けば、即座に10才に届くか届かぬかの子供を目の前に連れてきて強引に引き取らされたのだ。あまりの強引さにぽかりと間抜けな顔を晒した橋本だが、にこにこと愛想よく笑う少年を不憫に思い、その場は引き取ることにしたのである。早くに両親を亡くしてからどうも近しい親戚の間をたらい回しにされたらしい。相手をしていくには色んな意味で骨が折れそうだ。 一人身の橋本からしたら給金で子ども一人ぐらいを養うぐらいはどうということはないが、白状してしまえば子どもは苦手である。引き取ることはこの際もういいが、何せ子どもは繊細だ。感性も未熟で身体も未熟。橋本が守ってやらなければならない。加えて橋本の下にやって来るまでの彼の回りの環境は良くないものだっただろう。何せ親戚中を盥回しにされるぐらいだ。彼を橋本と引き合わせた中年の男も小さな瀬田を鬱陶しそうに見つめていた。そんな保護者だった男に対して瀬田は嫌な顔せずに笑みを浮かべていた。目も当てられぬ、酷い有り様だ。聊か狂うている。自己を屈折させた環境に身を置いた少年に対してどう接してやるべきか。心理カウンセラーでも教育専門家でもない橋本には解りかねるが、これ以上見過ごして彼を屈折させるのは目覚めが悪いし、屈折したまま成長される方が厄介である。もしそのまま成長してしまえば、それこそどうしようもなくなってしまう。はたして、邪険に扱われてきた子に対してストレスなくどう接してやるべきか。それが課題になるだろう。今は様子を見ながら少しずつ距離を図るしかないだろうか。 相変わらずにこにこと笑う瀬田にどうしたものかと頬を掻く。彼は橋本を見上げたまま、様子を窺っている。「あー、えっと……瀬田、宗次郎……くん」「はい」「取りあえず、今日からはうちに住んでもらうことになった」「ええ、オジさんから聞きました」「じゃあ……とりあえず、うちに行こうか」「はい、わかりました」 淡々と受け答えをする瀬田に、居心地の悪さを感じる。喉に魚の小骨が刺さるような不快感。飲み込めない理不尽に眉をひそめる事しか出来ない。せめて、せめて自分が今まで見向きもされなかった彼に目をかけやるしかない。「瀬田くん、荷物を持ってやろ」「いえ、結構です。それより行きましょう」「う……うん」 一先ず小さな切っ掛けからでも関わりを始めようと橋本は瀬田の手荷物を持ってやろうと進言したが、瀬田はにこりと笑みを浮かべたまま必要ないときっぱりと断ってさっさとリュックを背負うとすぐに最寄りの駅に向かって歩き始めてしまう。あまりにもバッサリと必要ないと言われた橋本は手持ち無沙汰に手を引っ込めるに引っ込められずに立ち尽くす。こうも一刀両断にされるとは考えもしなかった。完全に信用されてない。にこにこと笑ってはいるが、近付いてこようとはしない。今までにいた環境が環境ではあるが、これは距離を縮めるのには時間が掛かりそうだ。 さっさと歩き出した彼に、本当に可愛いげのないガキだと小さく呟けば、立ち止まったままの橋本にようやっと気づいたのか彼はきょとんと間抜けた顔で振り返った。来ないのかと言うように見つめてくる視線に、髪の毛を掻きむしり、前途多難だと頭を抱えたくなった。 まさに、たじたじ、である。14.08.15―――――――――――旧ブログからネタ掘り出したのでこちらに載せます。 あさきゆめみし / るろ夢 2024/11/19(Tue) 23:12:32
* 現代パロ。おねしょた。
* デフォルト:橋本凛
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にこにこと愛想の良いと笑みを浮かべる彼が得体の知れぬ化物のように思えてならなかった。行儀がよく、愛想よく笑みを浮かべる彼は不気味な異質さを持っていた。我が侭も言わなければ、生意気も言わない、粗相もしない。"都合の良すぎる子供"。気味が悪くないわけがない。大人からしてみれば文句なしの¨良い子¨――¨都合の良い子¨ではあるが、子どもとしては及第点すら届かないだ。子どもらしさのない子どもだった。子どもとは我が侭の一つや二つ、無知故の過ちに無謀に無防備に突っ込んで行って学び成長するものだと思う。自分も決して可愛い子どもではなかったが、まだ生意気であったし、無知故の無茶苦茶をしたものだ。だが彼はいい子過ぎる。可愛げがあるようで全くない。
彼、瀬田宗次郎と橋本凛は今の今まで面識などまるでなかった。遠縁に当たるらしいのだが、一度たりとも顔を合わせたことはなかった。寧ろ遠縁の存在など全く関知していなかった。ある日突然瀬田の保護者から橋本が瀬田と遠縁にあたると電話が掛かってくるまでその事実を知らなかったぐらいである。それを知った時の橋本は驚きもしたが疑問の方が多く、突然の知らせを不審に思う他なかった。
結果から先に言うと、その電話が掛かってきた時に瀬田を引き取るようにと体よく押し付けられたのである。話があるからと呼び出されて電車を乗り継いで呼び出された家に行けば、即座に10才に届くか届かぬかの子供を目の前に連れてきて強引に引き取らされたのだ。あまりの強引さにぽかりと間抜けな顔を晒した橋本だが、にこにこと愛想よく笑う少年を不憫に思い、その場は引き取ることにしたのである。早くに両親を亡くしてからどうも近しい親戚の間をたらい回しにされたらしい。相手をしていくには色んな意味で骨が折れそうだ。
一人身の橋本からしたら給金で子ども一人ぐらいを養うぐらいはどうということはないが、白状してしまえば子どもは苦手である。引き取ることはこの際もういいが、何せ子どもは繊細だ。感性も未熟で身体も未熟。橋本が守ってやらなければならない。加えて橋本の下にやって来るまでの彼の回りの環境は良くないものだっただろう。何せ親戚中を盥回しにされるぐらいだ。彼を橋本と引き合わせた中年の男も小さな瀬田を鬱陶しそうに見つめていた。そんな保護者だった男に対して瀬田は嫌な顔せずに笑みを浮かべていた。目も当てられぬ、酷い有り様だ。聊か狂うている。自己を屈折させた環境に身を置いた少年に対してどう接してやるべきか。心理カウンセラーでも教育専門家でもない橋本には解りかねるが、これ以上見過ごして彼を屈折させるのは目覚めが悪いし、屈折したまま成長される方が厄介である。もしそのまま成長してしまえば、それこそどうしようもなくなってしまう。はたして、邪険に扱われてきた子に対してストレスなくどう接してやるべきか。それが課題になるだろう。今は様子を見ながら少しずつ距離を図るしかないだろうか。
相変わらずにこにこと笑う瀬田にどうしたものかと頬を掻く。彼は橋本を見上げたまま、様子を窺っている。
「あー、えっと……瀬田、宗次郎……くん」
「はい」
「取りあえず、今日からはうちに住んでもらうことになった」
「ええ、オジさんから聞きました」
「じゃあ……とりあえず、うちに行こうか」
「はい、わかりました」
淡々と受け答えをする瀬田に、居心地の悪さを感じる。喉に魚の小骨が刺さるような不快感。飲み込めない理不尽に眉をひそめる事しか出来ない。
せめて、せめて自分が今まで見向きもされなかった彼に目をかけやるしかない。
「瀬田くん、荷物を持ってやろ」
「いえ、結構です。それより行きましょう」
「う……うん」
一先ず小さな切っ掛けからでも関わりを始めようと橋本は瀬田の手荷物を持ってやろうと進言したが、瀬田はにこりと笑みを浮かべたまま必要ないときっぱりと断ってさっさとリュックを背負うとすぐに最寄りの駅に向かって歩き始めてしまう。あまりにもバッサリと必要ないと言われた橋本は手持ち無沙汰に手を引っ込めるに引っ込められずに立ち尽くす。こうも一刀両断にされるとは考えもしなかった。完全に信用されてない。にこにこと笑ってはいるが、近付いてこようとはしない。今までにいた環境が環境ではあるが、これは距離を縮めるのには時間が掛かりそうだ。
さっさと歩き出した彼に、本当に可愛いげのないガキだと小さく呟けば、立ち止まったままの橋本にようやっと気づいたのか彼はきょとんと間抜けた顔で振り返った。来ないのかと言うように見つめてくる視線に、髪の毛を掻きむしり、前途多難だと頭を抱えたくなった。
まさに、たじたじ、である。
14.08.15
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旧ブログからネタ掘り出したのでこちらに載せます。