『ポッキー・プリッツの日』 / 2022.11.11 「これ……食べてくれませんか?」 珍しいこともあったものだ。何にせよ、相変わらず素直ではない。だかそういう素直でないところもからかいがいがあるというか、いじらしいというか。歯切れ悪く声をかけてきた凛が口に咥えた細い棒状の菓子。枝のようなそれの内側にはチョコレイトが詰められていて、中までぎっしりと詰まっている。 ポッキー・プリッツの日。十一月十一日。数字の一が並ぶ様がお菓子のポッキーやプリッツを連想させることからいつの間にかやそう呼ばれるようになった日だ。特別な日というわけでもないが、若い世代を中心にこの日を意識してポッキーやプリッツなどのお菓子を楽しんでいるようだった。ポッキーといえば、ポッキーゲームというものがあるが、二人の人間がポッキーの端と端を咥えて食べ進めていくいわばチキンレースだ。ポッキーを食べ進めていき、唇同士がくっつくかくっつかないかとそういったスリルに盛り上がったりするようだが、俗物的な意味合いが強いため、凛がそういった事を持ちかけてくるとは予想外であった。 そわそわと忙しなく宙を漂う視線。ほんのりと上気した頬。艶やかな色に染まる唇。こういったことに疎いからきっと誰かに吹き込まれたのだろう。だが、こうやって下手くそな誘い方をする凛も中々に健気だと思うと笑ってしまう。「そんなことしなくたってキスぐらいしていくらでもやるよ」 ガブリと噛みつけば驚いた顔の凛が咥えていたポッキーを落とす。バリバリと咀嚼しながら凛の顎を引っ捕えると、今度はがぶりと唇に噛み付いてやった。甘い、チョコレイトの味が口内に広がる。そろそろと体重を掛けてゆっくり押し倒すと、とろりと溶けた瞳が瞬きをして、そっと背中に腕がまわっていった。 あさきゆめみし / るろ夢 2023/07/22(Sat) 20:26:50
「これ……食べてくれませんか?」
珍しいこともあったものだ。何にせよ、相変わらず素直ではない。だかそういう素直でないところもからかいがいがあるというか、いじらしいというか。歯切れ悪く声をかけてきた凛が口に咥えた細い棒状の菓子。枝のようなそれの内側にはチョコレイトが詰められていて、中までぎっしりと詰まっている。
ポッキー・プリッツの日。十一月十一日。数字の一が並ぶ様がお菓子のポッキーやプリッツを連想させることからいつの間にかやそう呼ばれるようになった日だ。特別な日というわけでもないが、若い世代を中心にこの日を意識してポッキーやプリッツなどのお菓子を楽しんでいるようだった。ポッキーといえば、ポッキーゲームというものがあるが、二人の人間がポッキーの端と端を咥えて食べ進めていくいわばチキンレースだ。ポッキーを食べ進めていき、唇同士がくっつくかくっつかないかとそういったスリルに盛り上がったりするようだが、俗物的な意味合いが強いため、凛がそういった事を持ちかけてくるとは予想外であった。
そわそわと忙しなく宙を漂う視線。ほんのりと上気した頬。艶やかな色に染まる唇。こういったことに疎いからきっと誰かに吹き込まれたのだろう。だが、こうやって下手くそな誘い方をする凛も中々に健気だと思うと笑ってしまう。
「そんなことしなくたってキスぐらいしていくらでもやるよ」
ガブリと噛みつけば驚いた顔の凛が咥えていたポッキーを落とす。バリバリと咀嚼しながら凛の顎を引っ捕えると、今度はがぶりと唇に噛み付いてやった。甘い、チョコレイトの味が口内に広がる。そろそろと体重を掛けてゆっくり押し倒すと、とろりと溶けた瞳が瞬きをして、そっと背中に腕がまわっていった。